「赤字はどこへ消えた?」読了–財務諸表の見方を特徴的な日本企業の事例を使って説明する良書。ファンダメンタルズ投資の人は一度目を通されては。ヽ(^o^)丿
amazonのお薦めで、決算書の実用みたいな本が上がってきましたので買ってみました。
当書籍は、実際の決算書を通してその企業の実態を具体的に見ていこうという取り組みです。具体的なのが非常に良いところで、決算書の見るべき観点を適切に示してくれています。
一方、ある程度の経理財務の方、そしてファンダメンタルズ投資をされている方にとっては簡単すぎるので、退屈かもしれません。
ランキングで、今こんな順位にいます☆(*・.・)ノ
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第1章 なぜ決算書は粉飾できるのか?
第2章 なぜ利益があっても法人税が少なくても済むのか?
第3章 日本が世界に誇る企業は本業を2つ持つ
第4章 身近な企業を支えるアルバイトの力
第5章 損失でもキャッシュが増えるのはなぜ?
となっています。
この本は、全てリアルな決算書を事例として、上記のような課題を解説します。
では、上記の5つの事例はどの会社でしょう!
前者から、東芝、JAL、トヨタ、王将、武田薬品工業となります。
投資をしている人はピンとくる点があると思いますがいかがですか?
当書籍は、皆さんが感じる各企業の直感的なイメージと、財務諸表から得られる情報のギャップを示しています。
■東芝のテーマは粉飾
第1章では、リアルに東芝で使われた粉飾の手法。4つの観点で説明しています。
収益の計上基準(東芝の場合は工事進行基準)を巧みに使った粉飾。工事進行基準は減価の進捗、見積もり、出来高で収益を計上しますから、ここをごまかすがポイントになります。当然に、外部監査の監査法人はそこを徹底的に見ます。
次は、子会社や外注業者との取引の計上タイミングの問題。
次も同じく取引先との関係を利用した取引。
最後は、評価損を回避することによる、損の回避。
この東芝の例では、通常の事業をされている方は損と得はリアルな現金ベースの損得だと思っている人が多いと思いますが、財務会計上では、バーチャルな収益や費用があることを教えてくれます。
そういう意味では、「内部留保」について書いた私の過去記事↓も参考にしてもらえると助かります。
「内部留保ってなに?日本の会社は貯めこんでいるの? –お金を貯めこんで従業員に還元していないという錯覚」
内部留保っていう、いつでも企業は現金があるという錯覚を解説しました。
■JALは費用とキャッシュと税金のギャップ
第2章は、JAL。JALは会社更生法と稲盛和夫さんで奇跡的な業績回復で復活しましたが、そのからくりを解説しています。この章では、破綻した企業の財務指標の見方を示してくれていますが、その上で、復活した企業のからくりも示しています。
税効果会計という、バーチャルな費用が出る財務とリアルな儲けで税金を取っていく税務署の話になります。
投資家はバーチャルな費用をベースにした決算書を基本として投資を考えますが、実際の事業はどうかというと、このようなキャッシュベースや税務ベースでのリアルな話もあリ判断を難しくしています。
■トヨタは本業以外?
第3章はトヨタ。ここではトヨタの事業の強さを解説しながら、それ以外の収益の良さも言及しています。トヨタはもちろん事業者の強い会社ですが、金融事業での強さもきちんと把握しておくべきでしょう。
この章では、さらに会計基準の話もしています。4つの会計基準を解説しています。日本の企業会計基準。米国の会計基準。IFRSという国際会計基準。最後に、JMISという修正国際会計基準。インターナショナルの会社はこれらによって微妙に違う会計基準を使っていることを認識することは重要だと思います。
■王将のビジネスモデルは?
第4章は、王将の話。ここでは、各種勘定からフランチャイズビジネスのやり方を決算書から解説しています。
さらに、ROAやROEという、株主資本に対する業績の指標も解説しています。
■武田薬品工業はキャッシュとのギャップ!
最後の第5章は、武田薬品工業。決算書上の営業利益が赤字なのにキャッシュがプラスであることを解説します。
この章はけっこう大事ですね。企業が倒産するときのかなりの要因は黒字倒産ですが、決算書が良くても資金・キャッシュがショートすることはままあります。
投資家としては、資金繰りという要素も少しは頭に入れておいて良いかと思います。
■最後に
当書籍は、会計上の面白い話題を実際の決算書で解説する非常に実践的な書籍だと思います。
投資家としてはこのような観点をたくさんもって、たくさん財務諸表を読み込んでいけば、変な企業に騙されることはないでしょう。
ファンダメンタルズ投資の方や財務会計を習いたい方は、一度読んで見る価値はあるかと思います。
ただ、財務に詳しい方は悪しからず。
この記事のまとめ:
- 5つの企業の実際の財務諸表を解説する良書
- 財務諸表を見るべき観点を知りたい人については面白いかもしれない
- ただ、すでに投資を生業として、ファンダメンタルズを知っている人についてはつまらない書籍
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