「会社法による決算の見方と最近の粉飾決算の実例解説」 読了 –事実は小説よりも奇なりを感じる近年の粉飾決算を解説する良書

当書籍は、①会社法による決算に関する最新情報と、②粉飾決算についての2項目をテーマにしています。
前者は、計算書類における「注記」部分に着目し、細かく解説しています。
後者は、

  • 大王製紙
  • オリンパス
  • エフオーアイ
  • ニイウスコー
  • メルシャン
の事例を挙げ、比較的つい最近の粉飾決算事例を掘り下げています。
大王製紙の事例では、連結財務諸表には計上されない非連結会社や関連会社からの前会長への貸付金に関する「貸倒引当金」を利用した粉飾が中心となっています。
具体的には、次のものを取り上げ解説しています。
  • 繰延税金資産の計上額の訂正
  • 固定資産売却取引の取り消し
  • 非上場関係会社株式の減損損失の計上
  • 関係会社への貸付金および債務保証糖に対する事業損失引当金の計上
  • 子会社における固定資産の減損
これらの項目について、前会長ということもありガバナンスが効かなかったのが原因のようです。
また、粉飾のゴミ溜めと表現されている「その他の流動資産」についても解説がされています。
次のオリンパスの例は、「循環取引」です。
時価が大幅に毀損している資産を簿価で売却する「飛ばし」、時価より多額の金額で支払いをし裏金プールする「預け」を事例で持って解説してくれます。
また、関連会社をファンドを通じて買収することで多額の「のれん代」計上し、その償却費で多額の財テク失敗の損失を見えなくした手法も合わせて解説しています。
エフオーアイの事例は、資本市場からの増資を受けるために、ほとんど潰れている会社に対して、売上債権の架空計上することで一般投資家を騙した事例です。
次の章は、循環取引の典型事例、
  • クロス取引
  • Uターン取引
  • スルー取引(帳合取引)
を分かりやすく解説しています。ニイウスコー、メルシャンはその循環取引の事例をして挙げられています。
全般に事例と具体的データを示した解説があり、分かりやすい書籍だと思います。

全事例は意図的な粉飾であり、壮大な規模で行われている犯罪ですが、循環取引のスルー取引(帳合取引)などは各会社でも分からずに発生してしまう可能性がある事項ですから、各業務担当者の会計リテラシーを上げていくことも必要なんだな、と感じました。

会社法による決算の見方と最近の粉飾決算の実例解説 (KINZAIバリュー叢書) [単行本] 都井 清史 (著)

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もりかずお
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