「すべては「好き嫌い」から始まる」 読了 –「良し悪し」という一元的な印象を「好き嫌い」という多様的なものさしで捉えた良書!
当書籍は、経営学者として知られる楠木さんの著作です。
「良し悪し」という正義的な数直線一本で見ようとする時勢を、あえて「好き嫌い」という多様な軸を使い、様々な世の中の現象を観察していく著書となっています。
■章立ては?
さてさて、当書の章立てですが、
第1部 「好き嫌い」で仕事をする
第2部 「好き嫌い」で会社を見る
第3部 「好き嫌い」で世の中を見る
章立てとしては、3部の構成となっています。この中に、小さな章があり、全体で23個の章立てとなっています。
また、各章の始まりは、「あくまでも個人的な好き嫌いの話として聞いていただきたい。」という枕詞で始まっており、個人の見解を押し付けがましくなく、説明していくスタイルとなっています。
■この本の面白さ
この書籍の良さですが、著者の「好き嫌い」をベースとしていますが、その対極に置くのは「良し悪し」。
見た目は同じように見えますが、著者は、「良し悪し」を”世の中”の捉え方、と見るのに対して、「好き嫌い」は”個人”をベースとした価値観だと主張します。
2項対立させるなら、著作内で、唯一⇔多様、世間⇔個人、競争⇔競走などのようなキーワードで表されています。
私自身も、自分の著作である「株は「ゲリラ豪雨」で買い、「平均気温」で儲ける!」の中で、複雑系でカオスな人生や世の中は、多様な「物差し」で測ることを主張しています。
この意味は、一つの物差しで物事を決められるほど人生や世の中は単純ではなく、そのような決めつけが個人の特徴を消し去ってしまうことを危惧しています。
この本の面白さは、著者の「好き嫌い」と言う個人ベースのフィルタを通して、世の中の複雑性、理不尽さを問うているところにあります
■全方位的に凄い人?
ある章に、スゴい人が威張らない理由を書いているところがあります。
その中の印象的な記述が、「この人には敵わない・・・」と思わせる人でも、ある分野において余人に代えがたいのであって、全てについてスゴイ能力があるわけではない、と言うくだり。
そうですそうです。世の中にはいろいろな人が居て、各自得意分野を持っている。その特徴を尊重しようよ、と言う主張でして、それを「良し悪し」に当てはめず、各自の「好き嫌い」を活かそうという態度ですね。
なんか子育てを思い出してきました。
これからの多様性が重要視される時代、活かされる時代を象徴しているような主張です。
■位置エネルギーと運動エネルギー
もう一つ面白い表現が、人生における「経歴」と「実績」の2項対立表現。
経歴がその人の過去の状態を表しているのに対し、実績はその人の行動と定義していて、各々、位置エネルギーか運動エネルギーの違いと表現しています。
そして、このエネルギーは、エネルギー保存の法則のように言ったり来たりするもので、特に歳をとってくると位置エネルギーに偏りやすい。
そして経歴のような位置エネルギーはあくまでも組織を動かす手段にすぎないので、それを手に入れるのを目的にしないように、と注意を喚起しています。
歳をとってくると分かる話ですね。
■最後に
この本は、著者の好き嫌いの羅列かと思いきや、それをフィルタにしただけで、その先の世の中の本質をフィルタという手段を通して、見通そうとしているおもしろ書籍です。
そして、一貫して流れる主題は、多様性。
個人個人の好き嫌い、得意分野が活かされる世の中を問うている書籍でした。
ワタクシゴトですが、2018年5月に本を出版しました。
「株は「ゲリラ豪雨」で買い、「平均気温」で儲ける!」
amzn.to/2G1VtGw
ビジネス社さんより出していただきました。
この記事のまとめ:
- 経営学者として知られる楠木さんの著作
- 「良し悪し」と「好き嫌い」の2項対立から、世の中を切る
- 「好き嫌い」の多様な物差しの重要性を強調
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