「餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?」読了 --財務会計から管理会計の系譜を、体系的かつ具体的事例で理解できる良書。(*´∀`)

当書籍は、会計や経営の体系となっている、財務会計→管理会計→意思決定会計の詳細を、小説仕立てで実際の会社の運営を想定して解説しています。
そういう意味では、小難しい会計や経営の理論について、より実践的で具体的に示した書籍となります。

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■章立ては?

プロローグ 突然の社長就任
第1章 会計はだまし絵、隠し絵だ
第2章 現金製造機の効率を上げよ
第3章 大トロはなぜ儲からないか?
第4章 テストの見直しをしない子は成績が悪い
第5章 餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?
第6章 シャネルはなぜ高い?
第7章 整形美人にご用心
第8章 殺風景な工場ほど儲かっている
第9章 決断 進むか、退くか
第10章 シャーロック・ホームズの目と行動力を持て
第11章 会計のトリックに騙されるな!
エピローグ 夢に向かって
となっています。

話の展開は、父、矢吹源蔵が社長として経営するアパレル会社「ハンナ」について、父が急逝するところから話が始まります。
その娘の由紀はデザイナーとしてこの会社に携わっていましたが、急に新社長に任命されます。そして、この会社の最悪な状況、そして主要な社員が非合理的に会社を運営していたことを知ります。
そこを助けたのが、コンサルの安曇。合理的な方法で会社を立て直していきます。

■会計の体系どおりのストーリー

会計では、財務会計→管理会計→意思決定会計という体系があります。
それぞれ、財務会計は、対外的で主に外部のステークホルダーにきちんとした定形の情報を与えるための会計。
管理会計は、会社の経営をより合理的にし、変化に適応するための会計。
意思決定会計は、投資の合理性など、お金の使い方について適切な判断、意思決定するための会計となります。

上述の各章がどのような会計の内容・ストーリーになっているかを示します。

第1章 会計はだまし絵、隠し絵だ
この章では、PLの基礎が書かれています。特に利益の質、つまり粗利や営業利益の意味が解説されています。この辺はまだ序の口で基礎的でですので、ある程度の財務会計を理解している人にとってはつまらないでしょう。

第2章 現金製造機の効率を上げよ
この章でも基礎的なBSの話が続きます。BSの項目を利用した経営分析、指標の話が展開されます。

第3章 大トロはなぜ儲からないか?
この章になるとCSの話に移ってきます。基礎的な話も多いですが、事例がお寿司屋のネタを事例として、回転の重要さを説いています。

第4章 テストの見直しをしない子は成績が悪い
第4章は、計画とその見直し、つまり時間軸の話が出てきます。PDCAサイクルのことを知っている人は多いと思いますが、月次決算などのワンイヤーより未時間スパンで財務を監視すいることの重要性を説いています。
前の章までは財務会計の話でしたが、ここからいよいよ管理会計の話になってきます。管理会計は会社ごとの課題に適した方法を利用すれば良いので、その課題設定の話も出てきます。

第5章 餃子屋と高級フレンチでは、どちらが儲かるか?
第5章は、CVP分析の話。つまり損益分岐点分析です。
固定費、変動費の区別について、安い単価の餃子屋さん、高い単価のフレンチのお店を事例としてわかりやすく解説してくれています。

第6章 シャネルはなぜ高い?
この章ではブランド価値の話を出発点に、株主価値の話が出てきます。いわゆる純資産の話です。その定量化手法として、市場による評価額やDCFによる算定方法が解説されます。
その他に、ブランドを含む無形価値の評価、重要性を書いています。

第7章 整形美人にご用心
第7章は粉飾決算。粉飾決算を疑う3大ポイントである、売掛金、固定資産、費用計上時期を解説しています。面白い章です。
経営者になるには決算書を読めなければ話になりませんが、この本にも一貫して書いてある、決算書がすべてを表しているわけではない、つまり決算書でおかしいところを見ぬ言えて、最後は現場に聞いて問題の本質を明らかにする、という行動が重要だと気づかなければいけません。
私は株式投資を趣味としていますが、それは投資先の財務諸表を眺めて、その会社の問題、もしくは将来性を見抜く訓練ができるところも大きいです。投資に合わせて、楽しく財務諸表が読めますからね。

第8章 殺風景な工場ほど儲かっている
原価管理の話。原価の計算は、直接的で変動的な材料費をもとにするのは理解が早いですが、工場などの固定費に当たる部分の配賦をどうするかという問題がいつも付き纏います。共通にかかる費用をどのように割り振るかによって、その製品の原価率・利益率が良くも悪くもできるため、注意が必要です。
また、在庫には売上計上、利益計上の時期の話もあります。時間軸でこのような共通経費がどのように配布されるのかも気にしなければいけません。

第9章 決断 進むか、退くか
この章は、機会損失の話。意思決定会計の話に入ってきます。つまり、投資をするには、投資によって生み出される将来のキャッシュを現在価値に割り引いて戻したものが、投資コストを上回れば投資をする、という話です。
また、埋没費用、いわゆるサンクコストの話も出てきます。サンクコストは将来の投資の意思決定には影響を与えないことをしっかりと頭に入れましょう。

第10章 シャーロック・ホームズの目と行動力を持て
第10章は、先ほど上でも述べましたが、決算書だけでは見抜けないところは現場に足繁く通って理解しよう、その先にやっと意思決定がある、という話が展開されます。
よくある話ですが、財務マン(もしくは外部からの銀行マンや経営コンサル)は、あなたの事業の内容をほとんどわかっていません。事業の細かい内容を分かっているのは現場のみです。つまり、決算書を読んで意思決定する人は両方を俯瞰的に見られる人でなければいけません。

第11章 会計のトリックに騙されるな!
最後の第11章は、逆粉飾という名前がついていますが、つまり決算を悪く見せる手法についてです。普通に粉飾決算のことですが、第7章の逆側の話ですね。
日産のV字回復の話が出ています。

■ある経営者さんとの、私の思い出

このようなV字回復話については、私も数年前、経営塾で同じ経験をした覚えがあります。経営塾の朝活の会に出ていたのですが、そこで日本のトップメーカーの名誉会長さんと朝食をいただきながらディスカッションをする機会がありました。その名誉会長さんは業績が悪くなっていたその会社をV字回復で建て直された有名な方です。その朝活の場でも会社のグローバル化や事業ドメイン等の改革の話をしてくださいました。
その中で私が気になったのは、V字回復のグラフ。あまりにもきれいなグラフでしたので、ご飯を食べながら私の方から質問をしました。

私「あまりにもきれいにV字回復しているので、財務部門の私からしては、何か前年に意図的に損、つまり特損を出しているように見えます。差し支えなければ、どのようような部分で損を計上したかご教授願えませんか?」

その質問を聞くと、会長さんは、笑いながら、
「良い質問しますね。」
と前置きをして、ある事業の再編の話、経営体制の変革の話、そしてそこでどの部分を特損として計上したかを説明していただきました。

このように、この第11章では逆粉飾という名前で悪いように言っていますが、会計ルールの上で意図的に、そして一気に会社の膿を出してしまって、改革を内外に印象づけるのは会社経営上、非常に有効な方法だと思います。

ワタクシゴトですが、2018年5月に本を出版しました。
株は「ゲリラ豪雨」で買い、「平均気温」で儲ける!
amzn.to/2G1VtGw 
ビジネス社さんより出していただきました。

この記事のまとめ:

  • 財務会計から管理会計、意思決定会計の体系を物語風に解説
  • 具体的で実践的なため、理解が進みやすい構成
  • 個人的な思い出として、ある経営者さんとのV字回復の話題が思い起こされる

投稿者プロフィール

もりかずお
もりかずお代表