内部留保ってなに?日本の会社は貯めこんでいるの? --お金を貯めこんで従業員に還元していないという錯覚

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昨今、テレビなどのマスメディアでよく耳にする言葉に「内部留保」と言うのがあります。実はこの言葉、会計的にはきちんと定義された言葉ではなくて、いろいろな意味合いで採られる言葉となっています。
イメージとしては、会社が利益を蓄積したものの代名詞として使われていますが、実体はどうなのか、今日は見てみましょう。
とりわけ内部留保というと、会社は現金(預金)を貯めているようなイメージを持たれていますが、どうなのでしょうか?

内部留保は、(いろいろな解釈がありますが)おおむね利益剰余金のことを指します。

そこで、利益剰余金とは、ということになりますが、財務諸表のバランスシート、貸借対照表を見てみます。

右下に利益剰余金がありますね。
この右下の部分は、純資産といって(昔はこの表のように資本の部と言っていた)、会社を立ち上げた時に集めたお金の「資本金」や、会社を立ち上げた時に集めたお金の内、半分を限度にイザという時のために取っておく「資本準備金」、毎年の利益を積み上げていく「利益剰余金」などがあります。

では、この右下の純資産の部分はどのようなものなのかを見ていきます。
そのためにまずこの貸借対照表、バランスシートの構造から解説します。バランスシートはバランスと名前が付いているだけあって、左右の金額が同じ値になってバランスしています。左は資産、右は負債と純資産、このふたつが同じ金額になるんですね。

で、先に答えを言ってしまうと、ざっくりな話ですが、右下の純資産は、左の資産から右上の負債を引いたものとなります。この右下に現預金があるわけではなく、(ざっくりな言い方ですが)ただの引き算の残額が計算上でてくるだけです。つまり、皆さんがイメージする現金のようなものではなく、バーチャルな余り物というイメージです。

このことを実感するために、具体的に一つ一つの勘定科目を見ていくと、現金預金のようにかっちり金額が決まっているものがありますが、いかにもバーチャルで実体に合わないものも多々あります。
例えば、左上の流動資産にある商品、これは在庫のことですが、ユニクロのように陳列されているものならばまだその金額で売れるとは思いますが、旬を過ぎたものは廃棄ですよね。つまりこの商品金額を査定(棚卸し)するのはかなり難しい話で、裁量が入りやすい項目です。

似たようなものに左下の固定資産にある建物工具器具及び備品など。これらは会社の事業を進めるために必要な道具なんでしょうけど、いざこれを売ろうとした時には本当にこの価格では売れることはほとんど無くて、二束三文となってしまいます。実際、銀行がお金を貸す時に担保として設定するときにはこんな二束三文のがらくたは評価もしてもらえません。

さらに、逆モードなものが、土地。土地は財務諸表上、簿価で載っています。買った時の価格です。つまりむか~し買った土地は激安で財務諸表に載っている可能性があります。
この辺のギャップを突こうとしたのが、ライブドアであり堀江貴文さんだったりします。

次に右上、負債。ここは比較的に借入金(銀行からの借金)など実費に近いところがあります。しかしながら、固定負債にある退職給付(給与)引当金のように、退職金制度にDB(確定給付型企業年金)を敷いているような会社は、将来の従業員への退職金支払を想定して負債計算をしていますので、こちらも計算上の想像上の金額となります。

以上を踏まえると、「内部留保」にあたる純資産は、非常にバーチャルで、多めだったり少なめだったりする諸々の勘定項目を足したり引いたりした余り物と言うのが分かります。かなりブレが大きいものですよね。
ということで、内部留保などという言葉に惑わされずにきちんと会社の実態を見抜けるようにしましょう。ヽ(^o^)丿

その他にも、売掛金と買掛金の関係(いわゆるサイトの話)で現金は苦しい会社もあり、財務諸表と実際のキャッシュベースではかなりの乖離がありますので、注意が必要です。
参考記事「Panera Bread Company (PNRA)6 銘柄紹介 --パネラブレッドの資金繰りを見てみましょう」

このように財務諸表にはいい面も悪い面もありますので、投資においては、会社の良し悪しを貸借対照表や損益計算書だけで判断するのではなく、キャッシュフロー計算書で現預金の動きを追っていく必要があります。

この記事のまとめ:

内部留保は、実際に現金や預金があるわけではない
会社の財務諸表には、商品在庫や工具備品、退職金引当などのバーチャルな資産、負債がある
資産-負債のあまりものが内部留保