あなたの投資先は儲かっていますか?粗利益か営業利益か?さらに、限界利益か粗利益か? --財務会計と管理会計の違い。個別固定費の問題を踏まえた事業性評価

会社に務めるサラリーマンで、粗利益や営業利益、または、限界利益や貢献利益に違いを答えられる人がどれくらいいるでしょうか?

決算書上(財務会計上)では、利益は、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期純利益、当期純利益と並びます。売上総利益は別名、粗利益とも呼ばれます。

このような各種利益がある中で、会社はどのような評価を受けるのでしょうか?また、投資家としてどのような考え方で利益を見るべきでしょうか。

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また、投資家目線では、会社全体の利益、および利益成長を見たいわけですが、中にいる事業部の方々は自分の評価に関わってくることです。今回は、管理会計的な事業部内の利益についても見てみましょう。

投資家目線では他と比べられる財務会計的な利益指標、内部の事業改善には管理会計的な利益、それぞれの特徴や違いをみてみます。

会社の成績を何で評価するか?

当然に重要なのは、当期純利益(最終利益)が大事です。この純利益分がバランスシートの剰余金のところに積み増され、次の会社成長の源泉になります。これを元にEPS(一株利益)が分かりますので、会社の価格、つまり株価の割安性を測る基本データを得られます。

ただ、最終利益には、
「内部留保ってなに?日本の会社は貯めこんでいるの? --お金を貯めこんで従業員に還元していないという錯覚」
でも触れましたが、いろいろな経費や益が乗っています。その中には、みなさんが直感的に理解できる旅費交通費や外注費もありますが、減価償却費など架空の計算によって、費用を未来に配分している経費もあります。また、財務や経理をやっている人以外はあまり触れることのない引当金(貸し倒れ引当金、賞与引当金、退職金系の引当金、修繕引当金など)があります。引当金は将来発生が予想される費用を積んでおくことで、費用バランスの平準化を測るものですが、この値は計算値となります。

このようなバーチャルな費用が乗っていますので、最終利益は会社の実力を表しているかというと、そうでない側面もあります。

この章では、財務会計的な利益と、その各利益がどんな内容で、どんな不確実な要素を含んでいるか見てみます。

経常利益

最終利益から、その1年限りの損や益(特別損益)を除いたのものです。特別な損や益なので、具体的には、工場を閉鎖するための費用や裁判の費用などなど、上げればキリがありませんね。最終利益が良くても、このような一時的な益を計上している場合は、会社の本業ではありませんので、注意をしましょう。そのような一時費用や益を除いた経常利益で見るのは有用です。


営業利益

経常利益からさらに、利息や配当金の受け取り、支払いを除いたものです。営業利益は会社の本業を表す利益として認識されています。
経常利益には、利息や配当金の受け取り、支払いなど会社の本業ではない財務的活動の費用や益が乗っています。この分を除いたものが営業利益になります。
近年の韓国では、借金の利払いで利益が吹っ飛んでしまう企業が続出しているようなので、この利払いの大きさにも気をつけておくと良いでしょう。

なお、利払いの大きさの指標としては、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」というのがあります。(営業利益 + 金融収益)÷ 支払利息で表されるもので、ざっくり言って営業利益が利息の何倍あるかという指標です。これが1倍以下だと当然に利払いで赤字になってしまっている状況なので、最悪企業であると言えます。

売上総利益

営業利益から、販売及び一般管理費を除いた利益です。この利益は、収益(収入)から事業の経費のみを除いたものですので、本業の回し方の良し悪しを見ることができます。売上総利益は収入から売上原価を除いたものでもありますので、この売上原価の大きさで利幅(マージン)が大きい事業かどうかが分かります。

■限界利益と貢献利益の違いは?

では、次にもう一つ違った観点の利益を見ていきましょう。こちらは管理会計というジャンルの話になります。

管理会計では第一歩として、経費を変動費と固定費に分けます。業務が増えることによって一定量増えていく経費が変動費。業務の多寡にかかわらず必ず固定的にかかる費用を固定費と呼びます。
イメージでは、もしラーメン屋さんを始めるとして、ラーメンが売れれば売れるほど費用としてかかる材料などは変動費、店舗代など売れようが売れまいがかかってしまうのが固定費となります。ただ、管理会計の世界ではこの間のグレーゾーンな経費もあって、例えば、固定費的でも事業特有の個別固定費か、会社全体の共通固定費かに別れます。さらに、各々、事業組織内で管理可能な管理可能個別固定費、それ以外の管理不可能個別固定費に別れます。

ここまで分けてくると管理会計なのに何を管理するんだという感じになってきますが、固定人変動費に分けるにあたって、グレーゾーンの経費をどちらに割り振るかという課題の話です。
基本的には、あなたの会社のリスクサイドを常に見て、そのグレーゾーン経費を分けてみていってください。

変動費っぽくっても、そうそう減ることがない経費は固定費にしておくのが良いでしょう、

ここまでの話は、「固変分解」という大事な話ですが、ここまでをキチンとできれば、このあとの損益分岐点分析、事業別評価は自ずとできてきます。

固変分解ができたあとは、固定費額、変動費率を使って、損益分岐点を計算します。

損益分岐点は、
損益分岐点=固定費/(1ー変動費率)の計算式で計算できます。

さて、では管理会計時の評価はどんな利益があるでしょうか?

限界利益

売上から変動費を引いたものが限界利益になります。
管理会計では、この限界利益全体で、固定費を賄えているかを考えますので、非常に重要な利益指標になります。
管理会計では、財務会計と違い限界利益のボリューム感を掴んでおくことが重要になります。特に、事業とかセグメント別でこのボリューム感を調べつことが重要です。

貢献利益

限界利益からさらに個別固定費を引いたものが貢献利益です(なお、上述の限界利益を貢献利益と呼ぶこともあります)。
この貢献利益は、事業の継続決定をする時に使われる指標です。営業利益だけでは事業をやめるやめないの時に間違った決定をしてしまうため、その際は貢献利益を計算してみましょう。

人件費って、費用だったっけ?

さてさて、管理会計にももう一つ違った味方があります。管理会計では、事業部の評価もできますが、本当にそれは正しいの?という話もあります。

それは人件費の扱い方。
次回は、京セラ、JALの稲盛和夫さんが取り組んでおられた「人時管理」を踏まえて、人件「費」の新しい観点を書きたいと思います。

この記事のまとめ:

  • 事業の評価指標には、財務会計的な利益、管理会計的な利益が各種ある。
  • 財務会計的な利益は、他と比べることができ、投資家向け
  • 管理会計的な利益は、内部の事業を比べることができ、内部改善向け