「経営を強くする 会計7つのルール」読了 --公認会計士が強い会社の事例をもとに優しく読み解いてくれる管理会計の教科書

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当書籍は、公認会計士であり、各所のセミナーを行っている村井直志先生の著書になります。村井先生は大企業の会計・経営の仕事に携わってきており、当然に財務会計の分野に強い方ですが、セミナー等の主戦場でのお話は管理会計の話になります。
とりわけ強い経営のために考えておくことについては、体系だったお考えの持ち主で、当書籍も管理会計を通じて経営を見える化し、良い方向に導いていく方法を示しています。

章立ては、
ルール1 客単価をつり上げる
ルール2 顧客数を増やす
ルール3 優良顧客を見極める
ルール4 ビジネスを高回転させる
ルール5 好調品に集中特化する
ルール6 ダラリを排除する
ルール7 プロセスを複眼で観る
となっています。

一見関連なさそうな章立てに見えますが、売上分解の基礎、売上=客単価×顧客数、から始まって、CVP、事業部の評価、在庫管理、BSCなど、王道の内容が紹介されています。
全般に管理会計の手法だけでなく、実在する有名企業の事例をふんだんに提示してくれていますので、かなり分かり易い内容になっています。
管理会計の内容で言うと、投資の経済性効果の話題が少ないという感じでしょうか。

また、本書には著者がよく使う、会社を「えぐって」見てみる、という精神が一貫して流れています。えぐるというのは、より深掘りしてみてみるということで、単純な教科書に載っているような内容だけでなく、常にもう一段階経営の本質に立ち返って管理会計の言葉を解説します。
さらに事例を加えることで、皆さんが会社で利用するような指標を作るときの手ほどきをしてくれています。

では、各章で印象的だった内容をご紹介していきましょう。

まず、ルール1、ルール2では、ベーシックに売上=客単価×顧客数のルールを提示しています。その上で、顧客との信頼関係にかかわる話題を取り上げ、新規顧客を得るよりも、まずは優先順位として客単価を上げていくことを提唱しています。この顧客との信頼関係は「顧客マトリックス」という2次元の図を使い、各象限でどのようにお客様に向いていくかを具体的に示してくれます。

ルール3では、売上は「売れた売上」と「売った売上」を混同しないようにする注意することも書かれています。確かに、日常の仕事では、ユーザニーズをベースとする引き合いからの売上と、商品を開発し仕掛けていった売上があります。ここでは、マーケットインとプロダクトアウトの違いを意識することを強調しています。
また、ここでは、損益分岐点分析の基礎を提示して、利益を最大化する方式を示します。

ルール4では、いわゆる回転系の話ですね。一般的なROA、ROEの話もありますが、倒産に直結する資金の話が面白いです。
私は、財務の現場で資金繰りをやっていますので、仕入に関する現金と売上に関する現金のタイミングについては日々、非常にシビアに対応しています。いわゆるサイト差というやつですね。
普通のサラリーマンをしていると、ここのところはなかなかピンとこないところですが、現金化されるとことは、人間誰しもシビアになりますし、少しでも遅れると致命傷を負う場所でもありますので、非常に大事なポイントです。
当書籍では、キャッシュコンバージョンサイクル(CCC)として紹介しています。CCC=棚卸資産回転期間+売上債権回転期間-仕入債務回転期間となります。財務諸表を実務として作成していると分かるのですが、売掛金、在庫、買掛金は現預金を通して、あっちに行ったりこっちに行ったりしますので財務諸表の見方は注意が必要です。特に、BSは企業のストックを表すもので、決算の日でスライスしたものですから、一つの勘定科目が多くなっていてもそれだけ見ているだけではダメで、関連する勘定科目の多寡にも目を配る必要があります。

ルール5では、在庫の話から、欠品、廃棄の話が出てきます。特に廃棄は資産の減少で、BSが縮んで、その分、当期の剰余金が縮みますので、簡単に言うとPLに影響します。
ここでは、ABC分析のように品揃えに重みや優先順位を付けて管理をしていく手法を紹介しています。

ルール6では、非効率性の排除。ここで面白いのは、稲盛さんの人時管理でしょうか。人件費をコストとみなさない、利益を生み出す源泉とみなしています。人時管理は、各部署やグループの利益を総労働時間で割ることにより、時間あたりの利益を考えます。
私も、この考え方は好きですが、自分の会社で指標を作ってみても、使えるまでにかなり工夫がいるので、難しいところです。
管理会計は、各会社の事情に合わせてアジャストしていくことが非常に大事ですので、この辺りはやはり会社やその事業に精通している人が必要となってくるのでしょう。

最後にルール7では、仕事のプロセスの分解の話になってきます。いろいろな観点からプロセスを分解して、単純化する手法を説明しています。

以上、足早になぞってみましたが、当書籍の第一印象は、普通の管理会計の本に比べて一歩踏み込んでいる印象があります。教科書からは分からなかった内容をもう少し深く、そして会社の具体例を出して解説してくれている印象です。そういう意味で管理会計と言うものを知ってみたい人、また一度体系的に勉強した人でもう少し具体的に知りたい人には良い本かと思います。

この記事のまとめ:

  • 管理会計の手法を網羅的に解説している
  • 教科書に比べ、もう一段深く解説をしている印象
  • 会社の具体的事例も豊富なため、かんたんに読み進められる