「組織サバイバルの教科書 韓非子」読了 --法を元にした性悪説前提の考え方を解説。孔子の論語との比較、時代々々での環境変化による取り上げられ方の差異の解説が秀逸です。(^^)

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上記の画像を見てもらうとわかりますが、「組織サバイバル」や「社長が隠れて読んでいる権力論」などのどぎつい言葉が並んでいます。キャッチーなタイトルですが、本の内容は非常に内容が濃く、しかも読みやすい形式に整えられています。
その読みやすさのもととなっているのが、論語との対比。論語は孔子さんやその弟子の方々の伝承が収められた書物ですが、論語よりは認知度が低い韓非子を論語と比べて論述することにより、差異を際立たせています。
この対比の手法で韓非子を理解できるため、時代背景や中国の国的な背景を踏まえて、韓非子の良いところ、今の日本に通用するところが分かるようになっています。
では、まず章立てですが、
第1章は、人は成長できるし、堕落もする---「徳治」の光と影
第2章は、「韓非子」は性悪説ではなかった?
第3章は、筋肉質の組織を作るための「法」
第4章は、二千年以上も歴史に先んじた「法」のノウハウ
第5章は、「権力」は虎の爪
第6章は、暗闇の中に隠れて家臣を操る「術」
第7章は、改革者はいつの時代も割に合わない
第8章は、人は信じても信じなくても行き詰まる組織のまわし方
第9章は、使える権力の身につけ方
となっています。
まず大きな流れですが、この本はノウハウ本ではないので、自分の組織がうまくいっていない時に、その答えがぽんと出てくるような書籍ではありません。むしろ、本にかかれている対応策や人の心理は、日々組織で仕事をしている人にとってはアタリマエのことが書かれています。
しかしながら、その対応策が何故必要なのか、どのようなシチュエーションで必要なのかの理由を書いてくれていますので、それを用いるべきときや最善の背景を知ることができます。
この書籍は上述のように、韓非子を論語と対比させている手法を用いていますが、端からどちらも否定していませんし、どちらも全面賛成しているわけではありません。
それを端的に表しているのが、第2章の一文。
「人の本性は弱さにある」と題する段で、韓非の場合は、「人は信頼できない」という前提のもとに組織を作ろうとしたとあります。また、「史記」に記してある、韓非の師匠は「性悪説」と唱えた荀子だから韓非はそれを受け継いだという点を、当書籍はやんわりと否定しています。
その上で、韓非の人間感を、「人は状況の申し子である」と解説しています。
そして、孔子と韓非の対比として、
  • 孔子は、人は教育によって良くも悪くもなる
  • 韓非は、人は置かれた状況によって良くも悪くもなる
と結論づけています。
 
人間の本質をうまく表していますね。
どちらの人間も、普通に存在する人で、この180度くらい違う人格は常に共存しています。あなた一人の中にも共存していると思います。
 
人は、孔子の言うように徳や仁を心に持つものであるし、場合によっては、韓非の言うように悪いことも是として行動するものであることを、当書籍は言い当てていると思います。
その後の章については、韓非子が「法」に則った統治を目指していることを解説していきますが、それもシチュエーションがあってのことであることをきちんと記してくれていますので、それを理解した上で、現代の組織に適用するのは非常に有用かと思います。
最後の方の第8章では、論語的組織を目指しながら、韓非子のノウハウをハイブリッドする折衷案などを提示しています。その中には、折衷案の悪いところばかりを採ってしまった「日本の考課制度」、そしてその事例である「富士通の例の考課制度が崩壊した例」などが具体的に載っていて非常にわかりやすいです。
最後になりますが、当書籍は昔の中国の時代背景による具体的事例、現代の日本社会の具体的事例、孔子の考え方との対比を通じて、多面的に「組織」やその「マネージメント」を捉えることができます。
具体的事例も多いので、理解は進めやすいです。
組織のマネージャさんは是非手にとってみてください。ヽ(^o^)丿
この記事のまとめ:
  • 当書籍は、韓非と孔子を対比させながら、
  • 韓非子の、「法」の統治を分かりやすく解説している
  • どちらの考えも否定せず、また全面賛成もせず、人の光と影を解説している
  • 現代の組織マネージメントに活かせるエッセンスが満載