「帳簿の世界史」 読了 –世界の歴史を複式簿記の観点から論じた異色の書。会計の大事さとそれを誤魔化そうとする世界史のせめぎ合いを明らかに!ヽ(^o^)丿

久しぶりに面白い本を読みました。帳簿の世界史。本当に読んで良かったと思った一冊です。
文庫本で400ページと読み切るのに骨が折れますが、一読の価値はあります。企業会計に興味がある方、世界史の変遷と簿記の関係に興味がある方は、是非是非読んでみましょう。

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■章立ては?

章立ては、下記のようになっています。ヨーロッパやアメリカの世界的な出来事が、背景として会計の大事さ、つまりその国の財政の見える化と密接につながっていることを、一つ一つ解説していきます。

序 章 ルイ一六世はなぜ断頭台へ送られたのか
第1章 帳簿はいかにして生まれたのか
第2章 イタリア商人の「富と罰」
第3章 新プラトン主義に敗れたメディチ家
第4章 「太陽の沈まぬ国」が沈むとき
第5章 オランダ黄金時代を作った複式簿記
第6章 ブルボン朝最盛期を築いた冷酷な会計顧問
第7章 英国首相ウォルポールの裏金工作
第8章 名門ウェッジウッドを生んだ帳簿分析
第9章 フランス絶対王政を丸裸にした財務長官
第10章 会計の力を駆使したアメリカ建国の父たち
第11章 鉄道が生んだ公認会計士
第12章 『クリスマス・キャロル』に描かれた会計の二面性
第13章 大恐慌とリーマン・ショックはなぜ防げなかったのか
終 章 経済破綻は世界の金融システムに組み込まれている

■大きなテーマ、複式簿記と粉飾決済

この書籍で一貫して書かれている根底のテーマは、複式簿記と粉飾決算。
国の財政のコントロールには、その見える化が必要であることを一貫して主張しています。
帳簿をつける→さらに公開して見える化する→財政規律を保つ。このプロセスが一つでも破綻すると、国が滅びていきます。滅びていく様を、その時々の王様と財務担当者の関係で解説していきます。

とりわけ、どの王朝や政権でも繰り返されているのが、しっかりと帳簿と付けることと、それを隠したくなるトップの存在です。このあたりが人間の弱さや汚さが表されています。歴史は繰り返されています。

また、皆でお金を出し合って、利益を分配する、投資という概念が確立されてからは、それによりバブルが発生し、出資者が損をするという現象も繰り返されています。
チューリップ・バブル、南海バブルなど数世紀前から繰り返されています。今も変わっていませんね。

■私の好きな人、コルベール

第6章のブルボン朝の財政担当として出てくるのが、コルベール。
私は詳しくコルベールのことは知りませんでしたが、非常に興味を持った人でした。ブルボン朝が財政的に危ういときに登場し、見える化することにより健全な運営を取り戻した物語です。時間があるときに、コルベールのことを調べようと思っています。

コルベールの力によって一国の王が助けれる話ですが、残念なのはコルベールの死後は財政崩壊してしまったことでしょうか。上述のとおり、会計はそれを見せたくない人の力が強いため、制度化して縛らないと維持することが難しいことを学べます。

現在は、会計基準がしっかりしていますが、それでも不正をしようとする人が後を絶ちません。制度面の確立、倫理面の確立、両面が大事な領域なんですね。

■最後に

財務及びその基礎となる帳簿をつけることの大事さを学ぶことができる本書ですが、もちろん実務も大事です。
現在の企業においても実務が主となりますが、それを数字で表していくことが大事です。サラリーマンの私達ですが、それでもこの両輪を理解して仕事を進めていきたいですね。ヽ(^o^)丿

ワタクシゴトですが、2018年5月に本を出版しました。
株は「ゲリラ豪雨」で買い、「平均気温」で儲ける!
amzn.to/2G1VtGw 
ビジネス社さんより出していただきました。

この記事のまとめ:

  • 久々に読んで良かったと思う良書
  • 欧米の複式簿記の発展とそれを阻害する要因を、世界史視点で
  • 財政を数字で明らかにする人と誤魔化そうとする人の戦いの歴史

投稿者プロフィール

もりかずお
もりかずお代表