「大暴落 1929」 読了 –暗黒の木曜日の歴史的書籍。淡々と記述される阿鼻叫喚の当時の様子
本書は1955年に、経済学者のジョン・ケネス・ガルブレイスによって書かれたNY株式大暴落の「暗黒の木曜日」について、書かれたノンフィクションの書籍です。ウォール街の様子が生々しく書かれている点では、ほとんど歴史書に近いものがあります。また、ジョン・ケネス・ガルブレイスは経済学の大御所でもあり、ハーバード大学の名誉教授です。
書きぶりはいかにも経済学者という感じで、派手な表現はなく、極力事実をありのままに伝えようとしています。そういう意味では、インパクトは少ないですが、当時の様子を素直に学びたい方には持って来いの書籍だと思います。
そのことを端的に表す言葉として、冒頭に「私は予想はしない」と断言しています。
確かに、株式投資というのは過度な予想は禁物で、自分で予想をすればするほど自分にバイアスがかかり、最後は自分への呪文となってしっぺ返しを食らうものです。現実に大暴落を経験したからこそ、筆者はそのような態度となったのでしょう。
よって、大暴落を招いた人間や組織に対する書きっぷりはかなり冷ややかなものを感じます。
例として引用しますが、
- (p.66)とくに、連邦準備制度の貸出が関与するのでない限り投機資金の貸出に干渉する意図はない、と言うくだりは問題である。これを読めば、投機が現に進行しているにもかかわらず、FRBがその抑制よりも”責任逃れ”に意を注いでいることは明らかだ。
- (p.84)何より特筆に値するのは、投資信託、正確には会社型投資信託である。(中略)差額はコールローン市場や不動産に流れるか、発起人のポケットに入る。時代の要請にこれほど適った発明、株不足の懸念をこれほど払拭してくれる発明が他にあるだろうか。 → 完全に皮肉!!
- (p.140)経済というものは、毎度のことながら、はっきりとしたターニングポイントを示してはくれない。きっかけとなる出来事はいつも曖昧で、どれが発端なのかわからないことさえある。 → 裏を返すと、ターニングポイントを予測しようなどという人が多いことを示していますね。
- (p.228)セールスマンを筆頭に営業や接客をする人種も、無目的の集まりを頻繁に実行している。(中略)1929年の秋にフーバー大統領が直面した状況にあっては、こうした無目的の会議はうってつけの小道具だった。(中略)恐慌が深刻化するに連れ、フーバー大統領の会議は役に立たなかったと言われるようになった。が、これは、会議の本質を理解していない見方と言わざるをえない。 → 皮肉交じりですが、意味ないことも意味があるという世の中の不条理さに言及しているようです。
こんな表現が散りばめられており、当時の市井の状況を知るには良い書籍です。
また、私のようなバリュー投資で、暴落利用の戦術を持つ方は是非一度は読んで下さいませ。
話は変わりますが、私なりにこれまでの暴落の歴史をまとめてみました。
1600年台のオランダチューリップバブルから始まり、頻繁にバブルの崩壊が起こっているのが分かります。人間の欲望の足跡ですね。ここからはしっかりと学ばないといけません。
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