「世界を破綻させた経済学者たち」読了 –経済学上の7つの事象について批判する書籍。経済学を悪用する詐欺師を責めるべきだが、批判しかしない当書籍も詐欺師と同等!
当書籍は、「世界を破綻させた経済学者たち:許されざる七つの大罪」というタイトルで、いわゆる巷では学問ではないと言われる「経済学」の分野を一方的にぶった切ります。
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■7つの批判先
批判する7つのテーマは、
- アダム・スミスの神の見えざる手
- セイの法則
- ミルトン・フリードマンの自由主義的施策
- 効率的市場仮説
- インフレターゲット施策
- グローバリゼーション
- 経済学そのもの
基本的には、政府の介入を嫌う経済政策・経済思想、市場の完全性あたりが標的になっています。
■一方的な批判で、経済学の良い効能部分を無視
批判の論理展開は、すべての理論において反証を挙げていく体なのですが、ある意味経済学自体が矛盾をはらんだ学問なので、すべてを反証していく「だけ」の手法はいかがなものかと思います。
と言うのも、経済学は高度な非線形の系で経済学全般に置かれているような単純な切り口や、簡単な前提では、すべてを捉えることができません。数式や計算モデルをつくることすら難しい活動であり、仮に作ったとしてもカオスの現象が生じて、予期せぬ振る舞いが起きます。
このことは経済学者が前提としていることと思われるので、そこをいちいちこまごまと突いていてもあまり生産的ではありません。ある条件下ではそれなりに機能する理論の良いところを取り入れるという考え方が必要だと思われます。
著者は、現在の経済学が権威化して無条件に受け入れられ、乱用されていることを憂いているのですが、それをいちいち反論するのは少し大人気ないような気がします。乱用されているのは理論のせいではなくて、利用者のせいですから!(´・ω・`)
■ただ、前提条件を無視することは得策でない
しかしながら、現状の経済学の学問的利用において、前提を無視して利用されているのは非常に問題があり、著者に共感できます。
簡単に言うと、政治的に利用されている部分でしょうか。
答えが完全に求められないような事象で、確率などの直感に反する道具を利用しないといけない事象については、やはり最終的な利用者や利便性を受ける人々が結局尻拭いすることになるので、著者の指摘ももっともな点があります。
具体的に言うと、投資は全て自己責任ですが、前提条件によっては、全く180度違う答えが出てくることがあり、あまり考えずに進めてしまう素人投資家は必ず損をする事になっています。
カオスや抽象的な事象を悪用する政治家や証券会社はほとんど詐欺師のジャンルであるので、素人は防衛しなければならないのですが、その方法は経済学自身を批判することではなくて、経済学の本質を教育し広めること、またリスクを認識させることで実現させなければなりません。
そういう意味では、当書籍の著者はただの批判しかしない政治家と同等であって、フェアではないと感じます。
この記事のまとめ:
- 経済学上の7つの事象について批判する書籍
- 経済学の不完全性や前提を無視した利用、政治的利用を憂いている
- このような状況で、常に尻拭いをさせられるのは最終的な利用者
- この利用者を救うのは、理論を批判することではなく、不完全な理論の本質を教育し広めることだ
- そういう意味で、著者も、悪意のある政治的利用者と変わりはない
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